「賃貸不動産経営管理士」の試験まで71日④
「賃貸不動産経営管理士」の試験まで71日④。
今日の4問目は、敷金の承継に関する問題です。
「賃貸不動産経営管理士」の試験 平成29年の過去問 問14
【問 14】 敷金の承継に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 貸主が、建物を借主に引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は当然に第三者に承継される。
- 建物について抵当権が設定され、その登記がされた後に、当該建物についての賃貸借契約が締結された場合、抵当権が実行され、買受人に建物の所有権が移転すると、敷金に関する権利義務も当然に買受人に承継される。
- 貸主が、建物を借主に引き渡した後、当該建物に抵当権が設定され、抵当権が実行された結果、買受人に当該建物の所有権が移転したときは、敷金に関する権利義務は当然に買受人に承継される。
- 貸主が、建物を借主に引き渡した後、貸主の債権者が当該建物を差し押えたことにより、建物が競売された結果、買受人に当該建物の所有権が移転したときは、敷金に関する権利義務は当然に買受人に承継される。
1.貸主が、建物を借主に引き渡した後、第三者に当該建物を売却し、所有権移転登記を完了した場合、特段の事情がない限り、敷金に関する権利義務は当然に第三者に承継される。
売却による所有権移転の「登記前」に建物の引渡しがなされている場合、第三者に、貸主の地位が承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
実務上は、建物の売買の決済と一緒に現在預かっている敷金を新しいオーナーさんに引き渡しをしますので、新しいオーナーさんは敷金の返還義務を継承します。
その為、選択肢①は正しいです。
2.建物について抵当権が設定され、その登記がされた後に、当該建物についての賃貸借契約が締結された場合、抵当権が実行され、買受人に建物の所有権が移転すると、敷金に関する権利義務も当然に買受人に承継される。
抵当権設定の「登記後」に賃貸借契約が締結された場合、買受人には、貸主の地位は承継されず、敷金に関する権利義務も承継されません。
これは、よく賃貸契約の重要事項説明に記載されている事項です。
ほとんどのオーナーさんは銀行よりお金を借りて建物を建築しています。その為、賃貸物件には抵当権の設定があります。その抵当権が実行され買受人に建物の所有権が移転しても敷金の返還義務は継承されません。敷金の返還は元の貸主に返還の請求をする事になりますので当然継承されるわけではありません。
その為、選択肢②は誤っています。
3.貸主が、建物を借主に引き渡した後、当該建物に抵当権が設定され、抵当権が実行された結果、買受人に当該建物の所有権が移転したときは、敷金に関する権利義務は当然に買受人に承継される。
選択肢②の逆の場合です。
賃貸借契約が締結された後に抵当権が設定されたときは、買受人に貸主の地位は承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
法律上、抵当権が設定時に賃貸借契約があった場合はそれを込みで抵当権を設定していますので、抵当権が実行された場合、貸主の地位や敷金に関する権利義務も承継されます。
抵当権の設定後に締結された賃貸借契約は、抵当権設定時にはわかりませんのでその契約についての貸主の地位や敷金に関する権利義務も承継されませんという内容になります。
その為、選択肢③は正しいです。
4.貸主が、建物を借主に引き渡した後、貸主の債権者が当該建物を差し押えたことにより、建物が競売された結果、買受人に当該建物の所有権が移転したときは、敷金に関する権利義務は当然に買受人に承継される。
「差押え前」に建物の引渡しがなされている場合、買受人に、貸主の地位が承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
抵当権ではなく、差し押さえで競売になり貸主が変わったときの話です。
選択肢③の理屈と同じように、「差押え前」に賃貸借契約が締結されています。「差押え前」の競売による新しい買受人は賃貸借契約があるということをわかっていて買受をしていますので、貸主の地位や敷金に関する権利義務も承継されます。
オーナーが変わったから退去(明け渡し)をして下さいということはできません。
その為、選択肢④は正しいです。
「賃貸不動産経営管理士」の試験 平成29年の過去問 14の解答とまとめ
最も不適切なもの(誤っているもの)の選択肢は、②です。
今日の問題の内容は下記の様になります。
- 売却による所有権移転の「登記前」に建物の引渡しがなされている場合、第三者に、貸主の地位が承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
- 抵当権設定の「登記後」に賃貸借契約が締結された場合、買受人には、貸主の地位は承継されず、敷金に関する権利義務も承継されません。
- 賃貸借契約が締結された後に抵当権が設定されたときは、買受人に貸主の地位は承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
- 「差押え前」に建物の引渡しがなされている場合、買受人に、貸主の地位が承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
抵当権が設定してある賃貸物件を借りる場合
抵当権設定の「登記後」に賃貸借契約が締結された場合、買受人には、貸主の地位は承継されず、敷金に関する権利義務も承継されません。
万が一、貸主が返済をできなくて抵当権が実行された場合、競売により新しい買主に変わる事があります。
抵当権設定後の賃貸借契約ですので、新しい貸主に借主の地位や敷金の返還を請求することはできません。元の貸主に請求をすることになります。
新しい貸主から退去を申し込まれたら、賃借権の主張をする事はできませんので6か月までの間に退去(明け渡し)をしないといけません。
賃貸契約後に抵当権の設定や差し押さえがあった場合
賃貸借契約締結後に抵当権を設定して、その抵当権が実行された場合や差押えの競売により新しい貸主に代わった場合です。
買受人は、賃貸借契約がある事が分かった上での抵当権や賃貸借契約がある事が分かった上での差押えによる競売で賃貸物件を購入していますので、貸主の地位が承継され、敷金に関する権利義務も承継されます。
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